憲法は死んでいる?

憲法 死んでいる

日本国憲法はすでに死んでいます。もはや現代日本には民主主義もなければ、それどころか資本主義もない。日本国には憲法がない!

したがって、すべての改憲論、護憲論は現状においては無意味であるというのが私の結論。

【引用:痛快!憲法学(政治学者:小室直樹、集英社インターナショナル)】

小室直樹先生によれば、「日本国憲法はすでに死んでいる」から、憲法改正が達成されたところで、死人に手術をするようなものだというのです。

MEMO

小室直樹先生とは、日本の社会学者、評論家。学位は法学博士。東京工業大学世界文明センター特任教授、現代政治研究所所長などを歴任。(Wikipedia)

憲法が「廃止」されるとか「改正」されるという表現は直観的に理解できると思いますが、「死んでいる」とは一体どういうことでしょうか?

ワイマール憲法

小室直樹先生が指摘されたのはドイツの「ワイマール憲法」です。

国民主権、労働者の社会権(社会的弱者である労働者のストライキ権等)、大統領を直接選挙などを導入したワイマール憲法は、当時はもっとも進んだ憲法といわれていました。

しかし残念ながら、ワイマール憲法が機能することはありませんでした。なぜ?機能しなかったのか?

その理由は、ヒトラーがワイマール憲法を殺したからです。

たまに勘違いされてることがるのですが、かの有名なヒトラーは、軍事的な力をもって首相に就いたわけではありません。

ワイマール憲法のもと、民主的な手続きにより首相になり、ワイマール憲法を殺したのです。ではいつ殺したのか?

ヒトラーがワイマール憲法を殺したのは、1933年3月23日のことです。

1933年3月23日、ドイツの議会では「全権委任法」という法律が可決されました。この法律は、立法権をすべて政府に与えるというものです。

議会政治の基本は、行政府と立法府(法律の制定権)の独立にあるのですが、立法府の権限を行政府に明け渡したというわけです。

結果、ヒトラーは自分にとって都合のいい法律を次々に制定し、民主的な手続きのなかで合法的に独裁者の地位を盤石なものにしたのです。

冒頭で紹介した小室直樹先生の「憲法が死ぬ」という発言の意味はこういうことです。

ヒトラーはワイマール憲法を廃止したわけではない、、、、それにも関わらず独裁者になっているという点は注目すべき事実です。

日本の政治家の発言

以上、ワイマール憲法を例にして「憲法が死ぬ」ことの意味について解説しましたが、ワイマール憲法にまつわる日本の政治家の発言を紹介したいと思います。

あの手口に学んだら?

2013年での講演会での麻生太郎副総理の発言を紹介します。

憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね。(中略)、(マスコミは)わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。

参考 なぜ麻生太郎はナチスとヒトラーにこんなにこだわるのか?文春オンライン

実際には、ワイマール憲法が変わったわけでもなく、国民が納得したわけでもありませんが、民主的な手続きによってワイマール憲法が殺されたのは事実です。

わたしは立法府の長

安倍総理は、平成28年5月16日の衆議院予算委員会において山尾志桜里議員の質問に以下のように答えました。

(山尾志桜里議員は)議会の運営について少し勉強して頂いた方がいい。議会については、私は『立法府の長』。立法府と行政府は別の権威。

単なる言い間違いだと擁護することもできますが、ワイマール憲法がヒトラーによって殺された経緯を知ると少し怖くなりますね。

最後に&次回予告

ワイマール憲法が効力を失ったという事件から見落としてはいけない事実は、憲法は本質的に「成文法」ではなく「慣習法」であるということです。

日本やアメリカの憲法は成文の憲法があるので、「憲法は文字で書かれているのが当たり前」だと錯覚してしまいますが、そうではないということです。

実際にイギリスには成文の憲法はありませんが、長い歴史から生まれた慣習、法律、歴史的文書が一体となって憲法をつくっています。

憲法が慣習法であるということは、憲法の精神を国民全体が共有しなくなった時点で、そこに形だけの憲法があったとしても意味はないということなのです。

実際にアメリカ合衆国憲法は1787年に制定されましたが、アメリカの黒人奴隷制度は19世紀初頭から1863年にリンカン大統領が奴隷解放宣言をするまで続きました。

また21世紀になった現代においても、ドナルド・トランプ大統領の誕生ともに白人原理主義の勢力が強まっています。

1776年にフィラデルフィアで採択された独立宣言には、「われわれは自明の真理として、すべての人は平等に造られ(中略)」とあるにも関わらず、アメリカ合衆国憲法のもとで非人道的な振る舞いが正当化されていたのです。

小室直樹先生は、「どんなに立派な独立宣言があり、憲法の条文があっても、それが慣習として定着していなければ、その憲法はただの紙切れです。憲法は慣習法であり、成文法ではないのです。そして憲法を生かすも殺すも、結局は国民次第だということです。」(痛快!憲法学)とおっしゃっています。

あなたは日本国憲法を殺しますか?それとも生かしますか?

もう少し憲法について学習したい方のために、次回は「憲法は誰のためにあるのか?」という基本的なテーマについて解説したいと思います。

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