サンフランシスコの知られざる黒歴史

サンフランシスコ 歴史

サンフランシスコで観光を楽しむなら、ダンジネスクラブ(蟹)を食べ、歴史記念物でもあるケーブルカーに乗り、フェリーに乗りアルカトラズ島で超凶悪犯の牢獄を見学する、、、、というのが定番のルートですね。

他の街にはない独特の魅力を持つサンフランシスコですが、実はサンフランシスコ市街の土地は、かつて一人の男の持ち物だったことはあまり知られていません。

世界一不運な男の物語

これから紹介する話は、伝記作家シュテファン・ツヴァイクの「人類の星の時間」という短編集に収録されている実話です。

MEMO
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カルフォルニアに移住

1834年に一人のドイツ人がアメリカの移住してきました。彼の名はヨーハン・アウグスト・ズーターといいます。

ズーターはドイツで破産し、31歳のときに再起をかけてニューヨークにたどり着きました。ズーターは小銭を稼いだ後、さらなるチャンスを求めて当時はまだ未開の地だったサンフランシスコに移住するのでした。

ズーターは必死に働き、農園の経営を成功させ、ヨーロッパに残してきた妻子を呼び寄せることにも成功しました。破産してから裸一貫で成り上がったといっていいでしょう。

しかしある時、、、、思わぬ事件が発生してしまうのです。

砂金の発見!!

ズーターがアメリカに移住してから14年後の1848年のことです。ズーターの農園から砂金が発見されます。

ズーターが詳しく調べると、農園の中を流れる運河にたくさんの砂金が眠っていることが明らかになるのです。

破産し、農園の経営を成功させ、さらなる飛躍を遂げる大きなチャンスの到来です!!!!このチャンスは誰にも知られてはいけないと思い、ズーターは周囲に口止めをしました。

しかしズーターの農園で砂金が採れるという情報はあっという間に広まり、農園で働いていた人間ですら仕事を放棄して砂金探しをはじめてしまうのでした。

まさに悪夢

ズーターの農園には、次から次に不法侵入者が入り込んできました。まさに異常事態です。

不法侵入者はズーターの農園に無許可で入り込むだけでなく、ズーターが大切に育てた乳牛を殺して食べ、穀物倉庫を破壊し自分の家まで建ててしまいました。

次から次に現れる不法侵入者に所有地を踏み荒らされるだけでなく、不法侵入者はそのままズーターの所有地に住みついてしまうのです。

悪夢は続く

現代であれば「訴える」という手段にでるでしょう。もっともズーターも1850年に裁判所に訴えました。ズーターの訴えは以下のようなものでした。

サン・フランシスコ市のある土地はわたしの所有物であるから、カルフォルニア州は賠償金2,500万ドルを支払い、なおかつ不法占拠している1万7,220人の立ち退きを求む

ズーターの要求はもっともなものでしたので、裁判所もズーターの要求を認める判決を下しました。めでたしめでたし、、、、、とはなりませんでした。

なんと!!!判決を聞いたサンフランシスコの住民は、暴動を起こしたのです。裁判所を襲い、ズーターの全財産を奪うだけでなく、家族全員の命まで奪ったのでした。

無視されたままあの世へ

無一文になり、家族まで奪われたズーターは狂ってしまったそうですが、その後もずっと暴動による被害について訴え続けました。

しかしアメリカ政府ですら、ズーターの訴えを完全に無視しました。そして裁判から30年後の1880年、ズーターはワシントンの連邦議事堂の前で命を落とします。死因は脳卒中でした。

最後に

悲しいお話でしたが、この話が意味するところは重大です。なぜならば、アメリカ合衆国憲法が制定された1787年から約半世紀も経過していた時代ですら、アメリカは法治国家でも民主主義国家でもなかったことを意味するからです。

と同時に、憲法があるから、議会があるから、裁判所が判決を下してくれるから、、、、といって必ずしも、、、民主主義が成り立つわけではないことを、わたしたちに教えてくれるいい教訓でもあります。

サンフランシスコで観光を楽しむなら、ズーターの悲劇に思いを馳せるとより一層、記憶に残る観光になると思いますよ!